昆虫の性フェロモン識別機構の解明とバイオセンサの開発


昆虫のメスは‘性フェロモン’と呼ばれる複数成分からなる揮発性化学物質によって同種のオスを呼び寄せます。メスが放出する性フェロモンの成分は長年の研究により明らかにされてきましたが、オスがこれら成分を嗅ぎ分ける仕組みは分かっていませんでした。私達の研究室ではこれまでにオスの触角に存在する‘性フェロモン受容体’と呼ばれるセンサタンパク質を発見し、この受容体がそれぞれの性フェロモンの成分に特異的に結合することを明らかにしました(図)。現在までに、6種の蛾類から性フェロモン受容体を同定していますが、このタンパク質が成分を特異的に認識する機構や、オスがこれら受容体を用いて複数成分から成る性フェロモンを嗅ぎ分ける仕組みは未だ明らかにされていません。そこで、私はこれら性フェロモン受容体に着目し、昆虫のオスがメスを識別する仕組みを明らかにしようと研究を進めています。性フェロモンを識別する仕組みを明らかにすることにより、オスによるメスの認識を妨げる化学物質の開発など新しい害虫防除への応用や、性フェロモン受容体や嗅覚受容体を利用したバイオセンサの開発につながります。