胸部神経節には飛翔,歩行,発音などの重要な行動を制御する運動中枢がある.腹部神経節には,姿勢保持や,呼吸・循環に不可欠な腹部のリズミカルな運動,さらに交尾行動や産卵行動の制御に関わる運動中枢がある.これらの運動中枢は,それぞれに特有な感覚入力(トリガー入力)によって,脳と独立して自律的に運動パターンを発現したり補正しているが,行動の開始や維持などは脳からの下降性出力によって制御されている.
前大脳の高次神経叢であるキノコ体,中心複合体,前大脳側葉には,視葉や中大脳。後大脳,食道下神経節や腹側神経索からの感覚情報が,何層かのフィルターを通して処理・統合された形で伝えられる.高次神経叢では,種々の感覚種の情報が処理。統合され,最終的な決定は下降性介在神経の出力に変換される.この下降性の出力によって腹側神経索にある運動中枢が調節去れ,個体が直面しているさまざまな状況に対して適切な反応や行動を生み出す.したがって,頭部と腹部を切り離し,胸部だけの状態でも,羽ばたきや歩行を起こすことができる.また,胸部神経節にも学習能力がある.断頭したゴキブリを吊り下げ,脚がある高さまで下がると電気ショックが与えられるようにすると,30から40分でこのゴキブリは脚を次第に下げなくなる.このように昆虫では学習が胸部神経節など脳以外でも起こる.
Thoracic ganglion
The thoracic ganglia possess motor centers that control important behaviors, such as flight, walking, and vocalization. The motor centers residing in thoracic or abdominal ganglia autonomously express and correct motor patterns in response to their own local sensory inputs (trigger inputs) largely without depending on inputs from the brain. However, the initiation and maintenance of their motor patterns are generally controlled by descending interneurons from the brain.