テーマ:利他の蓮華―「利他のこころ」「いのちの大切さ」を一万人の子どもたちと大阪・関西万博から世界に発信しよう!
日時:7月24日(木)13:00~15:30
会場:高野山大学黎明館
キーワード:利他のこころ、いのちの大切さ、大阪・関西万博、伝統と科学の融合、一万人の子どもたち
セッション概要:人は自然環境や人と人とのコミュニケーションを通して、多様で個性豊かな理性と感性を育みます。しかし、無機質な情報にあふれた現代、自然と触れ合う経験や、人と人との直接のコミュニケーションは少なくなりました。私たちは、自分だけではなく他の人、そして自然界のあらゆるものとの関係性のなかで生かされています。こうした人本来のこころ—「利他のこころ」や「いのちの大切さ」に気づくことが、いま、重要なのではないでしょうか。このような「こころ」は古来、日本そして高野山・和歌山をはじめとする紀伊山地においても受け継がれてきたものです。
私たちマンダラプロジェクトは、連携協定を結ぶ東京大学先端科学技術研究センター、高野山大学、自治体(高野町、橋本市、かつらぎ町)、金剛峯寺、そして、本事業の趣旨にご賛同をいただいた、自治体、団体、個人のご支援のもと、オブジェ「利他の蓮華」の制作を行いました。
このオブジェは、約1,000枚の高野紙をつかった蓮華の折り紙、宮大工の技術による法輪や回転木部、そしてねぶた技術による台座からなります。折り紙の折には宇宙工学で使用される最新技術がつかわれています。また、一万人の子どもたちの感性調査による香りづけもおこない、伝統と最新科学を融合したオブジェとなっています。そして、台座には、和歌山県の一万人の子どもたちの協力で、子どもたちの「願い」を書いた2センチ四方の高野紙を貼ることで完成を目指しました。制作には、宮大工、アーティスト、デザイナー、伝統文化に関わるたくさんの皆さん、そして自治体、教育委員会等のご協力で制作しました。
この活動を通して、「利他のこころ」そして「いのちの大切さ」、そして伝統と文化を受け継ぎ、子どもたちに伝えるとともに、地域のみなさんがつながり、よりよい世界となることを、世界すべての人々にメッセージとして伝えていきたいと思います。また、このセッションでは、「利他の蓮華」の制作の背景や目的から、実際に制作をおこなった皆さんのお話しを交えながら、今必要とされる「こころ」について、会場からのご意見もいただきながら話し合っていきたいと思います。
「1200年後の世界」との関わり:戦争や紛争、食糧危機、環境問題などが世界規模でおこっています。今、わたしたちに真に求められれていることは何でしょうか。自分だけはなく、他の人、そして自然のあらゆるものが大切であり、わたしたちもその関係性のなかで生かされていることを冷静に感じとることと思います。「利他の蓮華」は、和歌山県の一万人の子どもたちと、オブジェの制作、そして大阪・関西万博での展示や発表を通して、「利他のこころ」「いのちの大切さ」という日本の、そして紀伊山地に育まれた「こころ」を世界に伝え、1200年後の世界へ継続してつなげていくために、たくさんのみなさんのご協力により制作されました。このセッションを通して、このような「こころ」を皆さんと共有できればと思います。
登壇者(統括:神﨑 亮平)
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神﨑 亮平 Ryohei Kanzaki 東京大学名誉教授・東大先端研シニアリサーチフェロー
筑波大教授を経て2004年より東大教授。2006年より先端科学技術研究センター教授。2016年から2022年まで同所長。生物知能を工学に活用する研究に従事。橋本市文化賞(2015)、和歌山県文化賞(2020)、ミラノビコッカ大学名誉学位(2019)。2021年より「高野山会議」を主宰。2024年4月より橋本市岡潔数学体験館名誉館長。JSTさきがけ「生体多感覚システム」研究総括。日本のSTEAM教育を推進するJST次世代人材育成事業STELLA「次世代科学技術チャレンジプログラム」推進委員長を務める。

松長 潤慶 Junkei Matsunaga 高野山大学長
1952年生まれ。明治大学政治経済学部を卒業後、高野山大学文学部密教学科に編入学し、同大学院修士課程を経て、博士課程を単位取得退学(1984.3)。密教文化研究所助手、講師を経て、同大学文学部密教学科の助教授、教授となり、文学研究科長、副学長、学長(2017.4~2021.3)を歴任する。高野山大学名誉教授、高野山学園顧問。2025年4月より高野山大学学長。専門は密教学で、密教経典の『金剛頂経』や金剛界曼荼羅に関する論文が多い。

尾上 恵治 Keiji Onoue 株式会社尾上組、一級建築士
1960年高野山生まれ。堂宮大工、一級建築士、一級土木施工管理技士、和歌山県ヘリテージマネージャー、和歌山県世界遺産マスター、金剛峯寺境内案内人、(宗)金剛峯寺 枢議。高野山にて社寺・一般綜合設計施工を営み、各種文化財や金剛峯寺をはじめとする各塔頭寺院の保存・修理に関わる一方、世界遺産マスター、金剛峯寺境内案内人として町石道等の保全作業や、世界遺産の保持・保存のための講演及びガイドを行い、高野山の魅力を発信し続けている。著書に「世界遺産マスターが語る高野山」自分の中の仏に出逢う山 新評論社がある。

藤原 和博 Kazuhiro Fujiwara 富士通株式会社 デザインセンター クリエイティブディレクター/チーフデザイナー
1995年東北工業大学工業意匠学科卒業。2022年より先端アート講座研究員。2001年より富士通株式会社で自社製品のプロダクトデザイン、ブランディングを行い、その後、クライアント企業向けの新規事業創出支援、VRコンテンツ開発、クラウドファンディングによるテストマーケティング、デザイン思考の社内浸透などを手掛ける。 現在はどうしたらITテクノロジーがこの世界の調和に貢献できるのかを探求中。

幸島 柚里 Yuri Koshima 株式会社資生堂ブランド価値開発研究所研究員
2020年筑波大学生命環境科学研究科修了。株式会社資生堂に入社後、化粧品の香料開発や香りの応用研究を主に行う。近年ではNature Centeredの考え方を取り入れた香気分析研究やその可視化、Inclusive designを活用した香り製品のプロトタイピングに挑戦するなど、アートデザイン分野融合型の研究に取り組んでいる。2022年より先端アート講座アドバイザー、2024年より先端アート講座研究員。

益子 遼祐 Ryosuke Mashiko 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程
光を用いたコンピューティングやイメージング手法の開発に従事。折紙アーティストとしては展示や講演、メディア出演等を行う。仏教芸術の作品が学展 2019 外務大臣賞受賞、2022 salon d’Automne 展にて入選。

[研究協力]大島 空代 Sorayo Oshima 東京藝術大学大学院美術研究科芸術学日本・東洋美術史専攻 博士課程
東京藝術大学美術学部芸術学科卒業、同大学院修士課程修了。現在、同大学院博士課程在籍中。インドネシア・バリ島の宗教儀礼用仮面の展開を彫刻史から考察。
高野山宣言
高野山宣言を採択します
