“いのち”やそれをはぐくむ自然の大切さは誰もが願うところです。しかし、今の世界の実状はそれとは大きくかけ離れています。環境問題や食糧問題、格差問題をはじめとするさまざまな課題が蓄積し、さらには紛争や戦争も絶えない状況が続いています。

わたしたちの“こころ”の奥底には、自然は私たちの“こころ”であり、また私たちの“こころ”には自然が宿る、人も自然の一部であるという“こころ”があるのではないでしょうか。だから自然をつくるすべてのものが大切であり、自分だけではなく他人、動物、植物、昆虫、さらには水や石に対しても思いやりという“こころ”が生まれ、“いのち”を大切にする“こころ”が生まれるのだと思います。

「高野山会議」は、科学・芸術・哲学・宗教・教育、そして自治体や企業などのさまざまな背景の方が、多様な角度から今の時代の課題を対話を通して議論し、“いのち”の大切さや人本来の“こころ”のありかたに気づき、それを1200年後まで発信し続けていくために設けられた会議です。

おかげさまで、「高野山会議」は、多くの皆様、自治体、企業のご賛同をいただき、高野山金剛峯寺、高野町、高野山大学、和歌山県、橋本市、かつらぎ町との共催で、今回第4回目を開催いたします。このような無為自然の輪が「高野山会議」からさらに広がっていくことを願っています。

今年、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20周年を迎えました。記念シンポジウムも企画し、「高野山会議」を1200年先まで皆様とともに継続して創っていくことの大切さについてもあらためて振り返ってみたいと思います。多くの皆様のご参加をお待ちしています。

東京大学名誉教授、先端科学技術研究センター シニアリサーチフェロー  神﨑亮平