次世代育成~芸術環境創造『ひとづくり まちづくり』~
セッションタイトル
「次世代育成 悠久の絆を包摂する環境創造『まちづくり』」
日 時:7月11日(金)16:00-17:15
会 場:金剛峯寺大会議室
キーワード
まちづくり 地域社会 世界遺産 環境創造 SDGs
オーガナイザー
近藤薫 東京大学先端科学技術研究センター 先端アートデザイン分野 特任教授
「1200年後の世界」との関わり
『人間とは社会的な動物である』古代ギリシアの哲学者アリストテレスがそう語ったのはおよそ2500年前。これまで人類の歴史上、さまざまな地域、時代に合わせ、さまざまな社会が形成されてきました。または社会そのものが地域や時代の概念を作ってきたとも言えるでしょう。近代化以降、社会そのものが手掛けてきた「まちづくり」は都市化、効率化の一途を辿り、世界の姿を一変させました。1200年後の世界を考えるとは、1200年後の社会のあり方を考えることでもあるのです。
セッションの概要
社会とは文化・価値観・倫理観・信念、そういったものを共有する人の集まりであり、人類は歴史上より良い社会、より豊かな社会を常に築かんとしてきました。しかし、豊かに見える社会ほど閉塞感に見舞われ、生物内でエントロピーが増大していくように社会そのものが衰退していく―これは、社会を体系的にシステマチックにデザインする概念が運命的に陥る「価値観の収束」に端を発します。皮肉なことに、成熟・安定した社会を望むほどにシステムは強固になり価値観はより収束され、新陳代謝が滞り、多様性を失い、自らの社会が生み出した問題を自らで解決できなくなってしまいます。
現在の「まちづくり」の考え方は、持続可能性と共生の考えにシフトしてきたと言われています。エネルギー効率の高い建築物、再生可能エネルギーの導入、緑地の拡充など環境保護を重視した都市設計が推進されています。また、スマートシティ技術の活用により、交通管理、エネルギー効率化、公共サービスの最適化が実現され、多様なニーズに応じた柔軟な都市開発が行われています。しかし、これは本当に1200年持続可能な「まちづくり」なのでしょうか。インフラの整備、快適な生活空間の確保など、ハード面の拡充に傾倒することが必要条件に近い文明の維持は、社会全体の人間性の欠如には全く対応できず、本来私たちが真っ先に取り掛からねばならない自然環境との共存は、どこまでも夢物語で、理想郷の域を超えません。
高野山会議2024では、昨年の次世代育成セッション「STEAM教育と芸術環境創造」に引き続き、人を育むために必要な環境創造=まちづくりを話題にします。
私たちがつなぎ残していくべき、悠久の絆とは何なのでしょうか?
1人目の登壇者は丹生都比売神社宮司の丹生晃市宮司です。紀伊山地が世界遺産に登録された背景の本質と、丹生都比売神社とともに歩む「まちづくり」についてお話しいただきます。2人目の登壇者は、前 愛知県長久手市長の吉田一平氏です。在職中、「分かちあい」「助けあい」「みどり」の3つのフラッグを政策の礎とし、本質をついた目指すべき未来社会のための「まちづくり」を牽引した御仁に、その深く優しい哲学を語っていただきます。
登壇者
丹生 晃市 丹生都比売神社宮司
吉田 一平 前長久手市長
登壇者プロフィール

近藤 薫 (KONDO Kaoru)
東京藝術大学をアカンサス賞を受賞して卒業後、同大学院修士課程修了。東京フィルハーモニー交響楽団およびFuture Orchestra Classics コンサートマスター、バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ首席客演コンサートマスター、リヴァラン弦楽四重奏団主宰。東京大学先端科学技術センター先端アートデザイン分野特任教授。東京音楽大学、洗足音楽大学講師。JST「さきがけ」領域運営アドバイザー。東京フィル創設時のコンサートマスター近藤富雄は祖父で、三世代に渡ってヴァイオリニスト。愛知県出身。
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丹生 晃市 (NYU Koichi)
國學院大學文学部神道学科卒業。神社本庁事業課長、教学研究所資料室主任等を経て、1985年から丹生都比売神社権禰宜兼務となり、2006年、宮司に就任して、現在に至る。累代の惣神主家から九州に分家した血筋にあたる。『丹生都比売神社史』(2009)の刊行、世界遺産の啓蒙活動の他、「いのりとみのり」をテーマに和歌山県の観光誘致活動や地元交通機関の活性化等にも取り組んでいる。

吉田 一平 (YOSHIDA Ippei)
昭和21年4月愛知県長久手村生まれ。高校卒業後、15年間、商社に勤める。サラリーマン時代に地元の消防団団長を務め、その際に地域の人から「ありがとう」と言われることで自治に目覚める。昭和56年、区画整理で失われつつあった長久手の緑を残そうと幼稚園を始める。その後、社会福祉法人愛知たいようの杜理事長を経て、平成23年9月、長久手町長に就任。平成24年1月の市制施行により初代市長。令和5年9月に長久手市を退任。趣味は人と会うこと、人と話すこと。